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どんどん変わっていく保険と金融。
今年は新製品も多く、目が離せません!
FPからのアドバイスも注目。新しい保険の時代がはじまります。
                                                  
[2016-09-30]
 東京海上日動、東京海上日動あんしん生命、業界初 超保険生保契約に割引

 東京海上日動と東京海上日動あんしん生命は、両社が共同開発して販売する生損保一体型保険「超保険」を改定し、10月から「まとめて割引」を拡充する。従来の損保の割引対象種目・割引率を拡大するとともに、業界初となる「生保まとめて割引」を導入する。超保険は補償(保障)をまとめて契約することで、@補償(保障)の漏れ・ダブりの解消A家族単位での保険契約全体の一元管理B保険料負担額の軽減(まとめて割引)―を実現しているが、「まとめて割引」はこれまで「超保険・損保」のみが対象だった。顧客から長期火災や生保の超保険への割引導入の要望が多数寄せられていたことから、これら顧客ニーズに対応するとともに、従来以上に生損保の垣根なく顧客をカバーできる保険の提供を図る。
 今回の改定では、まず、「超保険・損保」と「超保険・長期火災(注1)」のまとめて割引で、「超保険・損保」の始期(更新)時点で一定の金額以上の補償を3種類契約する場合の割引率を2%から3%に拡大する。
 また、「超保険・長期火災」の始期(更新)時点で所定の条件を満たす契約が締結されている場合(注2)に、保険料を1%割り引く。
 「超保険・生保(注1)」のまとめて割引では、業界初となる「生保まとめて割引(正式名称:初年度保険料の割引に関する特約)」を導入し、契約の申し込み時点で所定の条件を満たす契約が締結されている場合(注2)に、初年度の保険料を2%割り引く(注3)。
 すでに「超保険・損保」を契約している顧客が、新たに「超保険・生保」を契約する場合には、本人だけでなく家族の生保契約についても割引を適用する。
 超保険は、「コンサルティングを通じて、一生涯にわたって顧客を生損保両面から守り、家族全員に安心・満足を提供する」ことをコンセプトとした東京海上グループの生損保一体型の戦略商品。
 2002年6月の発売以来、同グループの独自商品として多くの顧客から支持を得ている。
 (注1)超保険・損保は「トータルアシスト超保険(新総合保険)」、超保険・長期火災は「トータルアシスト超保険(住まいの保険)」、超保険・生保はトータルアシスト超保険のうち、東京海上日動あんしん生命で引き受ける商品のことを指す。
 (注2)超保険として新たに同時に契約する場合も含む。
 (注3)長生き支援終身、家計保障定期保険、メディカルKitNEO、メディカルKitR、メディカルKitラヴ、メディカルKitラヴR、がん治療支援保険NEO(診断給付金のみ担保を含む、がん診断保険R

 
[2016-09-29]
 三井住友海上が高齢者向けに新型火災保険を販売、日常生活支えるサービス充実

 三井住友海上は2017年1月1日以降を保険始期とする契約から、高齢者向けの新たな火災保険「GK すまいの保険 グランド」の販売を開始する。親族と離れて暮らす独居高齢者が増加し日常生活における支援サービスのニーズが高まっていることに対応するとともに、1980年〜90年代に契約した従来の長期火災保険で無事故のまま満期を迎えた顧客が「火災保険は不要」と考える懸念があることから、「事故がなかった顧客にも“保険に入っていてよかった”と感じてもらえる商品」を目指して、充実した補償に加え、事故が発生していない日常生活を快適にするための豊富なサービスを付帯する。
 付帯サービスは契約者だけでなく、緊急連絡先として登録した親族も利用できる。
 防災・減災情報アラートサービスでは、豪雨や台風、大雪、落雷などにより保険契約者とその親族(遠方で暮らす子どもなど)の住まいに被害を及ぼす危機的状況が発生した際に、保険契約者と親族へメールなどで緊急通知し、併せて、防災・減災に役立つ情報(災害時のノウハウ集)を案内し、事故発生を防止する。また、災害発生の1週間後をめどに、保険契約者へ事故発生の有無を確認するアフターフォローメールを配信する。
 提携事業者紹介サービスは、独自の提携事業者ネットワークを優待料金などで利用できるサービスで、事故発生により自宅に住むことが困難な場合に、仮の住まいとして短期入居可能な家具付き賃貸住宅やホテルなどを提供する事業者の紹介も行う。
 「暮らしのQQ隊グランド」は、水まわりのトラブルや鍵紛失時の玄関ドアの鍵開け、大型家具の移動や高所の電球交換、室内の照明設備や建具の不具合発生時に、それぞれ専門の業者を手配するサービス。契約者の場合、30分程度の応急修理などに要する作業料・出張料は無料(親族は業者の紹介のみ)。
 その他、健康・医療、介護、年金・税金、法律相談、相続税、ペット、パソコン操作など、日常生活での困り事に専門のスタッフが電話で対応する無料電話相談や、離れて暮らす親族の安否確認を目的として、契約者が前記「暮らしのQQ隊グランド」や事業者紹介、電話相談サービスを利用した場合に、親族に対してその利用状況をメールなどで通知(月1回)する「つながりレポートサービス」を提供する。
 顧客への分かりやすさと利便性の向上のため、パンフレット、約款、保険証券などは説明スペースを大幅に拡大(パンフレットで2倍、保険証券で1.5倍)した上で読みやすい大きな文字とイラストを豊富に使い、分かりやすい説明書類を目指した。パンフレットでは動画(拡張現実コンテンツ)による説明も用意しており、スマートフォンなどの専用アプリでアイコンを読み取ると説明動画を視聴できる仕組みになっている。また、契約者には補償内容を動画で分かりやすく解説した商品説明用DVDを提供する。
 新規で加入する顧客には、保険証券の見方を印刷した保険証券保管用中袋やサービス会員証保管用ポケットなどをセットにした専用証券ホルダーを配布する。
 保障内容では、建物・家財の免責金額のラインアップを拡充し「免責金額0万円」を選択できるようにした。また、事故時諸費用保険金の支払い対象事故を火災などに限定できるようにした他、水災事故の場合に保険金の支払限度額を30%、10%に制限できるようにした。

 
[2016-09-28]
 金融庁、金融行政進捗を確認・評価、M&AやERMの問題点指摘

 金融庁は9月15日、「平成27事務年度 金融レポート」を公表した。同レポートは、平成27事務年度にどのような方針で金融行政を行っていくかについてまとめた、昨年9月に発表された「金融行政方針」の金融行政のPDCAサイクルを強く意識し、その進捗(しんちょく)状況や実績などを継続的に評価し、平成28事務年度(2016年7月〜17年6月末まで)の「金融行政方針」に反映させることを目的としている。金融庁では同レポートを、金融行政の透明性の一層の向上や、当局と金融サービス利用者・金融機関・市場関係者などの間での認識の共有、当局との建設的対話を通じたより良い金融行政の実現、ひいては、金融システム・金融市場の健全な発展につなげたい考え。
 レポートでは「平成27事務年度 金融行政方針」に掲げた金融行政の重点施策に基づいて、@金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保A活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現、市場の公正性・透明性の確保B顧客の信頼・安心感の確保CIT技術の進展による金融業・市場の変革への戦略的な対応D国際的な課題への対応Eその他の重点施策―の6施策について進捗確認と評価を行った。
 保険会社については、@の中で、少子高齢化の進展や新技術の導入、保険ニーズの多様化など環境変化が進む中での経営課題などについて、さらに近年、経営環境の変化に応じてM&Aによる海外業務の急速な拡大や事業再編を行っていることを踏まえ、大手生損保各社のM&Aにおけるガバナンスの発揮状況などについてモニタリングを実施した。加えて、保険会社から提出されるリスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)の状況を取りまとめたORSAレポートを活用し、同レポートを基にERMヒアリングを実施した上で、ERM評価を行った。
 保険会社の収益構造や事業戦略の持続可能性について金融庁は、今後、生保加入の中核層となる30〜40歳代のボリュームの縮小が予想され、また、自動車保険の総契約台数が漸減傾向で特に若年者の減少が顕著なことを挙げ、保険会社にとってこうした経営環境は、働き盛り世代に終身保険や自動車保険などを販売していく伝統的なビジネスの限界を示す一方、高齢化に伴う医療・介護保障ニーズの高まりや新技術導入などによる保険ニーズの多様化といったビジネスチャンスにもなる他、積極的な海外展開の契機にもなるとの考えを示した。
 また、大手生損保を中心に今後の経営課題などについて総合的なヒアリングを実施した結果、多くの保険会社で、中長期的な経営戦略における海外事業の位置付けや、欧州系のグローバル保険グループを中心として進んでいる経済価値ベースのリスク管理をどのように自社のリスク管理に取り入れるかなど、環境変化への対応に向けて共通の課題があることがうかがわれたとした。
 また金融庁は、近年、大手生損保が相次いで国内外の保険会社などの大型M&Aを実施したことを受けて、M&A実施に当たっての取締役会での議論や経営陣のリーダーシップの状況について国内一般事業会社の取り組みも参考にしつつ実態把握を実施。結果、ガバナンスが不十分な事例が見られたとし、M&A実施に当たっては、取締役会が会社の将来像を描いた上で、経営戦略を策定し、経営戦略に基づいた具体的な海外事業方針などの下、重要事項を十分議論して迅速かつ的確な経営判断をすることや、買収先を適切に管理するための態勢を整備することなど、実質的にガバナンス機能を発揮して業務を進めていくことが重要だと指摘した。
 保険会社のERM評価については既報の通り。
 ゆうちょ銀行とかんぽ生命については、今後は上場企業として企業価値の向上を目指し、中期経営計画に掲げる資金運用・リスク管理の高度化、郵便局ネットワークを活用した優れた金融商品の販売、民間金融機関との連携―などに取り組むことが重要だとし、今後の課題として、特に民間金融機関との連携、郵便局ネットワークの活用などを通じた金融サービスの向上や地方創生への貢献が重要だとした。そのために経営資源を集中すべき具体的な業務について議論を深め、積極的な取り組みを促すとともに、民間金融機関に対しても、金融サービスの向上や地方創生へ貢献する業務での連携・協調を促していくとした。


[2016-09-27]
 明治安田生命が生活習慣改善でFiNCと共同研究、健康増進促す新商品やサービス

 明治安田生命はこのほど、モバイルヘルステクノロジーベンチャーのFiNCとの間で、国民の生活習慣改善の取り組み継続に資する研究を共同で開始することで合意した。
 共同研究では、明治安田生命健康保険組合が開催する生活習慣改善キャンペーンに参加する従業員約2万人を対象に、今年10月から1年間にわたり、生活習慣改善のための行動変容要因の分析を行なう。対象者の一部には心拍数や睡眠時間が計測可能なウエアラブル端末を配布するとともに、FiNCの提供する生活習慣改善プログラム「FiNCプラス(注)」を導入する。
 従業員のウエアラブル端末と「FiNCプラス」の継続利用状況や生活習慣改善の行動変容について、非対象者との対比などによる分析を行なうとともに、活動データと生活習慣病との因果関係の分析を行ない、新たなヘルスケアサービスや保険事業へ応用していく。
 具体的には、企業の従業員などの生活習慣病の予防・改善など、継続的な健康増進に向けたサービスの提供や、新たな保険商品の開発などを目指すとしている。また、本共同研究を基礎として、FiNCとの新たなヘルスケアサービスの開発を視野に入れた検討も行っていく。
 生活習慣病は健康寿命の最大の阻害要因であるとともに、国民医療費にも大きな影響を与えている。その予防や健康寿命の延伸には生活習慣改善の取り組みを継続していくことが重要とされるものの、取り組みの継続が与える影響に着目した研究はこれまで少なかったという。
 明治安田生命では今回の共同研究について、生活習慣病の予防や医療費抑制の観点からも意義のある取り組みだとしている。
 (注)利用者一人一人に合った食事・運動の生活習慣を改善するプログラムをスマートフォンアプリで提供するとともに、ヘルスケア領域の専門家に24時間健康相談を受けることが可能なサービス。チャットで健康増進の取り組みを支援するパーソナルコーチ機能も提供する。

 
[2016-09-26]
 MRASがオリックス生命とライセンス契約、自動引受査定

 ミュンヘン再保険のグループ会社で、生保業界向けに自動引受査定ソリューションを提供するミューニックリーオートメーションソリューションズ(MRAS、本社=アイルランド・ダブリン)はこのほど、自動引受査定エンジンAllfinanz Intervuew Server(AIS)のライセンス契約を含む、必要な契約全てをオリックス生命と締結し、導入プロジェクトを開始した。併せてミュンヘン再保険日本支店(生命再保険)もAISに搭載される自動引受査定ルールの提供についての契約を締結し、オリックス生命の査定標準に合致するよう、共同でドリルダウン質問と査定結果に至るまでのルールを構築する。
 オリックス生命が開始したプロジェクトは、顧客に保険を提案する際に作成する設計書のデータを用いてペーパーレスで申し込み手続きを完了する仕組みを導入するもの。AISを採用することで、一連の手続きの中で被保険者が告知する健康状態に応じて追加の質問を展開し、販売の現場で一定程度の査定結果を提示することが可能になる。質問された内容に回答する形式のため、必要事項が不足することがなく、記載漏れによる追加の事務手続きの削減も期待できる。その結果、顧客の負荷も軽減できるという。
 告知内容に基づく自動査定結果が特別条件となってしまった場合は、その場で承諾できる方法と、後日あらためて紙の承諾書を提出する方法があり、顧客の要望に合わせた承諾方法を準備する。
 オリックス生命はAISに加えてAPIモジュールも購入。APIモジュールを使用することにより、AISに備わっている告知画面を使用せずに、オリックス生命独自の画面を構築する。同社では、マルチチャネル化推進のため、代理店チャネル、直販チャネル、ウェブダイレクトチャネルにこれらの機能の導入を計画しており、2017年中の本格稼働を目指す方針だ。
 MRASは1987年の設立以来、世界各国の主要な生保会社にAISや、新契約に係るデータ分析・レポーティング・ツール(Business Analytics)などの自動引受査定ソリューションを提供する、業界をリードするソフトウエア・プロバイダー。日本でも導入する企業が年々増加しており、生保会社の売上の向上や顧客獲得コストの削減に貢献している。同社は今年、創立30年を迎えるが、今後も日本市場を重視し、継続的な取り組みを推進していく考えだ。

 
[2016-09-23]
 生保協会が定例会見、顧客本位の販売手数料開示を

 9月16日、日銀記者クラブでの生保協会定例会見で根岸秋男協会長は、生命保険に関する販売手数料開示と、社会保障教育と併せた保険教育推進の2点について報告した。9月1日に公表した販売手数料開示に関する指針では「お客さまにとって分かりやすい開示になること」を目的に、特に留意する事項についての考え方を整理したとし、各社の取り組みを後押しする考えを示した。また、社会保障制度に関連付けた保険教育実現に向けての施策を説明し、具体的な内容については来年2月に公表することを明かした。
 会見ではまず、台風10号による犠牲者に哀悼の意を示すとともに、被災者に対してお見舞いを述べた。その上で、生保各社では災害救助法が適用された地域の契約について保険料の払い込み猶予期間延長や必要書類の一部省略などによる簡易、迅速な支払いといった特別措置を講じていることを強調した。
 報告では、保険販売手数料開示について、9月1日に公表した「市場リスクを有する生命保険の販売手数料を開示するにあたって特に留意すべき事項」に言及。これまでの協会内の議論や市場ワーキンググループ(WG)での議論を踏まえ、開示に当たって顧客本位のものとなるような考え方を整理したと説明した。
 続いて、7月の就任会見で表明した「保険教育の継続推進」の現在の検討状況を報告。次期学習指導要領の審議のまとめや年度内に示される予定の小中学校の学習指導要領の改定案について、今年4月に公表した「保険教育推進に関する報告書」を踏まえた意見発信と関係各方面への働き掛けを行っていく方針を示した。加えて、保険教育実現に向けて、@中学校・高等学校への情報提供充実に向け、教師の意見を反映した教材や教材活用マニュアルを厚生労働省と連携して作成A教師向けに保険教育の情報をワンストップで提供する環境整備(協会ホームページ内にポータルサイト開設)―に取り組む。具体的な内容については、2017年2月に公表するという。
 報告後の質疑応答では、記者から販売手数料開示とマイナス金利についての質問が多く寄せられた。販売手数料開示について指針の公表を早めた理由を問われた根岸協会長は、主たる銀行が10月からの手数料開示を表明する中、開示方法にばらつきがあると顧客にとって分かりやすいものとならないとの懸念から9月1日に公表したと説明。公表した留意事項を参考にすることで、「お客さまにとって分かりやすい開示につながっていくのではないかと考えている」と期待を示した。また、「販売手数料を開示するか否か、開示内容などについては最終的に保険会社と金融機関の合意の下で判断されるもの」としながらも、協会として引き続き会員各社の顧客本位の行動の取り組みを積極的に後押ししていくとの立場を明確にした。
 一方、日銀の金融政策については昨年までの政策は評価しているとしながら、マイナス金利政策について「金融機関の収益圧迫」「個人マインドに悪影響を及ぼした」など副作用が大きかったとの見解を示した。また、貯蓄性商品の販売停止、保険料引き上げなどについてどう考えるかという質問について、「今の低金利が続くのであればこの傾向は変わらない」と回答。「平準払いの貯蓄性商品についても、来年以降非常に難しくなってくるのではないか」との見通しを示しながら、公的保障を補完する役割を担っているため、顧客ニーズに応えられる努力をしなければならないとの考えを示した。この他、経済政策全体という観点から「労働力の質と量の向上のためにダイバーシティが必要」だとし、業界の健全な発展を通じて日本経済再生のために貢献していきたいと展望した。

 
[2016-09-21]
 損保協会の熊本地震対応、査定簡素化や特別措置標準化が課題

 損保協会は9月16日、業界紙向け定例記者会見を行い、4月に発生した熊本地震に対する損保業界の対応について総括した。今後の課題として損害査定の簡素化や特別措置の標準化、事業継続計画(BCP)の見直しなどを挙げた。この他、前日に日銀記者クラブで行った北沢利文協会長の記者会見内容やミャンマーのヤンゴンで開催したISJ海外セミナーなどについて報告した。
 熊本地震に対して損保業界は、被害の拡大を踏まえた大規模地震損害処理体制を敷き、同協会本部に「地震保険中央対策本部」、九州支部に「地震保険現地対策本部」、熊本県に「現地機関」を設置して対応した。8月31日時点で事故受付件数は約26万3000件、支払保険金は約3573億円、調査完了率は98.3%になった。同協会は、行政機関やメディアなどあらゆる関係者の協力の他、損保業界が一つにまとまり、東日本大震災の経験を生かした地震保険金の迅速・的確・公平な支払い、被災者支援のための取り組み、適時の情報提供に努めたことが大きく寄与したとしている。
 相談対応については、地震保険契約に係る照会や相談に休日も応じた他、フリーダイヤルを設置した。そんぽADRセンターでの地震保険に関する相談・苦情受付件数は1503件(8月31日現在)、自然災害損保契約照会センターでの契約照会受付件数は362件(8月31日現在)になった。
 損害調査対応については、一定の条件の下での保険金請求手続きの簡素化や、損害調査人がモバイル端末を活用した査定を一部で実施した他、業界ベースでの支払保険金調査を行った。また、東日本大震災の経験を踏まえた対応として、契約者の自己申告に基づく損害調査を東日本大震災時の「木造建物(従来軸組工法)」「生活用動産(家財)」、損害程度「一部損」に加えて「木造建物(枠組壁工法)」、損害程度「半損」まで対象を拡大する措置などを実施した。
 特別措置として、保険金請求書類の一部取り付け省略や、継続契約の手続き、保険料払い込みを最長16年10月末まで猶予する措置を実施した。損保各社ではこの他にも被災者の利便性向上に資する特別措置を講じている。
 さらに同協会は、被災者への情報発信として、損保会社の窓口・電話番号などを記載したポスター「損害保険に関する相談窓口のお知らせ」を約8000枚、特別措置の内容を記載したリーフレットを約11万枚作成し、損保会社や避難所、被災地の自治体などで掲示・配布した。
 迅速な保険金支払いに向けた今後の主な課題には、@損害査定の簡素化A特別措置の標準化B事業継続計画(BCP)の見直し―の3点を挙げた。今後、@については、自己申告に基づく損害調査の対象拡大や、モバイル端末を用いた立会調査方式を検討する。Aについては、災害規模などに応じた特別措置の標準化をあらためて検討する。Bについては、同協会本部や会員各社の本社が機能不全になることも想定しながら、災害発生時の業界体制の在り方などについて検討し、必要に応じて拡充する。
 一方、平常時には、代理店を対象にした地震セミナーやメディアを通じた広報活動、ぼうさい探検隊など、地震リスク・地震保険に対する理解促進や防災教育に資する取り組みを推進する。
 会見ではこの他、日銀記者クラブで行われた北沢協会長の記者会見の内容や、ミャンマーのヤンゴンで開催したISJ海外セミナーについて説明した。協会長会見では、熊本地震対応の総括や、8月27日、28日の「第1回防災推進国民大会」への参画、9月5日の「地震保険制度創設50周年記念フォーラム」について報告した。「第1回防災推進国民大会」では、「揺れを知る」「被害を知る」「生き抜くために」をテーマに、有識者によるパネルディスカッションやワークショップ、展示を行った。「地震保険制度創設50周年記念フォーラム」には、損保業界関係者や一般消費者383人が参加し、財務省、金融庁による基調講演や専門家によるパネルディスカッションを行った。
 また、9月8日、9日に開催したISJ海外セミナーには、ミャンマーの保険会社や監督官庁から初日に149人、2日目の幹部対象のワークショップに70人が参加した。
 ミャンマーでは、保険契約・事故の増加に伴って査定担当者の育成が急務となっていることから、セミナーでは自動車・火災保険の損害調査や損保会社のリスクマネジメントサービスなどをテーマに取り上げた他、ミャンマー計画・財務省金融規制局の要請を受けて、金融庁監督局保険課の及川景太課長補佐が講義した。ミャンマーでは現在、保険協会設立に向けて検討が進んでいるという。


 
[2016-09-20]
 金融庁が保険会社ERM評価結果を公表、ガバナンス備えた会社は一部

 金融庁は9月15日、「保険会社におけるリスクとソルベンシーの自己評価に関する報告書(ORSAレポート)及び統合的リスク管理(ERM)態勢ヒアリングに基づくERM評価の結果概要について」を公表した。リスクの多様化・複雑化を踏まえて、保険会社では、規制の順守に加えて、適切なリスクとリターンのバランスの下で全てのリスクを経営戦略と一体で統合的に管理する統合的リスク管理態勢の整備・高度化を図ることが重要な課題となっている。こうした中、金融庁は保険会社に対しリスクとソルベンシーの自己評価に関する報告書(ORSAレポート)を作成・提出させる取り組みを2015年度から開始しており、今回、同レポートの内容などを基に保険会社のERM評価の結果をまとめた。
 金融庁はERM促進の一環として、保険会社に対し、2015年3月末時点(原則)におけるORSAの状況をリスクとソルベンシーの自己評価に関する報告書(ORSAレポート)として取りまとめ、金融庁へ提出(提出期限:15年9月末)させる取り組みを15年度から開始。さらに、各社のORSAレポートを基にERMヒアリングを実施した上で、保険会社のERM評価を行った。平成27事務年度については、規模特性の観点から保険料等収入等に基づき保険持ち株会社8社、生保会社25社、損保会社23社を選定し、評価を実施した。
 評価に当たっては評価目線を作成し、「リスク文化とリスクガバナンス」「リスクコントロールと資本の十分性」「リスクプロファイルとリスクの測定」「経営への活用」などの項目を検証し、ERMに関する態勢が整備されているか、ERMの考え方が保険会社内に浸透しているかといった観点から確認を行った。
 各保険会社の総合的なERM評価の結果については、その内容ごとにレベル1〜レベル5に区分を行った。その結果、ERMを健全性確保に加えて、リスク文化の醸成や収益性の向上にも活用し、経営全体に生かすガバナンスを備えた会社はいまだ一部であり、評価結果にはばらつきがみられた(上グラフ参照)。
 評価目線の項目別の評価結果の概要は次の通り。
 「リスク文化とリスクガバナンス」では、大手損保会社(グループ)と一部の生保会社(グループ)で先進的な事例が見られ、一定程度のリスク文化が社内に醸成されていた。しかし、多くの保険会社ではERMに基づく考え方を今後社内浸透させていく段階であり、リスク文化の醸成はこれからという状況だった。
 「リスクコントロールと資本の十分性」については、大手保険会社(グループ)を中心に先進的な事例が見られ、リスクに対する資本の十分性を確保する態勢が一定程度整備されていた。しかし、多くの中小保険会社では、経済価値ベースに基づく健全性に関する内部管理上の取り組みなどはこれからという状況だった。
 「リスクプロファイルとリスクの測定」では、大手保険会社(グループ)を中心に先進的な事例が見られ、計量可能なリスクだけでなくエマージングリスクなどの計量できないリスクについても把握する態勢が一定程度整備されていた。しかし、多くの中小保険会社では、こうした取り組みやモデルガバナンスなどに関する取り組みは今後の課題としている状況だった。
 「経営への活用」については、大手損保会社(グループ)と一部の生保会社(グループ)で先進的な事例が見られ、資本配賦などを通じてERMを経営に活用していた。しかし、多くの保険会社では、ERMの活用は健全性に関する取り組みが中心であり、経営への活用はこれからという状況だった。
 今回の評価結果を受けて金融庁は「ERM評価は、定量的・画一的に健全性を評価するだけではなく、適切なリスク文化・ガバナンスと高度なリスク管理態勢を備えた保険会社における積極的なリスクテークを合わせて評価する枠組みであり、健全性を維持した上で保険会社の適切な成長を促す観点から、引き続き高度化を促進していく」とするとともに、今後、ERMヒアリングとORSAレポートを通じて、現時点の静的な健全性評価にとどまらず、将来の動的な健全性を幅広く分析することで、より実態に即した監督を行っていく考えを示した。

 
[2016-09-16]
 16年度第1四半期 ダイレクト自動車保険9社、元受正味保険料合計7%増

 ダイレクト自動車保険9社(ソニー損保、アクサ損保、チューリッヒ保険、三井ダイレクト損保、SBI損保、セゾン自動車火災、イーデザイン損保、そんぽ24、アメリカンホーム)が発表した2016年度第1四半期(16年4月1日〜6月30日)業績によると、9社の元受正味保険料など(イーデザイン損保は正味収入保険料)の合計は前年同期比7.4%増の838億円となった。9社中7社が前年同期実績を上回っている。
 ソニー損保は自動車保険の元受正味保険料が前年同期比3.2%増の225億円と堅調に推移した。保有契約件数は自動車保険とガン重点医療保険を合わせて16年6月末で181万件になった。
 アクサ損保の自動車保険の元受正味保険料は同5.5%増の129億円だった。自動車保険の特約比例再保険の出再率の引き下げにより出再手数料が減少したものの、堅調な元受正味保険料の伸びと広告宣伝費の投資効率向上などによる正味事業費率改善により、前年同期を上回る収益を達成。今後も堅固な収益力を基盤として、顧客への強固な支払い余力(ソルベンシー・マージン)を維持するとともに、成長に必要な投資を行っていく。
 チューリッヒ保険は自動車保険の元受正味保険料が同1.4%増の93億円となった。成長戦略はほぼ計画に沿って進捗(しんちょく)しており、傷害保険および自動車保険では元受保険料が増収した。三井ダイレクト損保の自動車保険の元受正味保険料は同2.3%増の92億円と前年同期実績を上回った。
 SBI損保、セゾン自動車火災、イーデザイン損保の3社は増減率が2桁の伸びを示した。SBI損保の自動車保険の元受正味保険料は同12.8%増の84億円、保有契約件数は同11.5%増の84万件と高成長を持続している。セゾン自動車火災は自動車保険の元受正味保険料が同33.8%増の94億円と大幅な伸びを示した。イーデザイン損保は正味収入保険料が同28.6%増の63億円と前年同期実績を大きく上回った。
 そんぽ24の自動車保険の元受正味保険料は同2.7%減の34億円だった。アメリカンホームの元受正味保険料(収入積立保険料を含む)は、保険商品の新規契約の販売活動の終了により、収入の約8割を占める傷害保険・医療保険の分野では同4.4%の減収、自動車保険は同18.6%の減収となり、全種目においては同6.5%の減収となった。

 
[2016-09-15]
 損害保険協会、平成28年熊本地震に係る地震保険の支払件数、金額を発表

 一般社団法人 日本損害保険協会(会長:北沢 利文)では、8月31日(水)現在の平成28年熊本地震に係る地震保険の支払件数、金額等について取りまとめ発表した。
【2016年8月31日(水)現在:232,606件、約3,573億円】
都道府県 事故受付件数
(注1)
調査完了件数
(注2)
支払件数 支払保険金
(千円)
 福岡県  19,586 18,749 13,583 8,400,830
 佐賀県  3,065 2,909 2,157 1,660,478
 長崎県  826 803 542 316,954
 熊本県  221,885 218,913 203,153 336,565,726
 大分県  15,424 15,050 12,284 9,667,789
 宮崎県  480 450 308 266,977
 鹿児島県  402 391 213 103,597
 その他  655 625 366 269,648
 合計  262,323 257,890 232,606 357,251,999

(注1)「事故受付件数」には、事故に関する調査のご依頼のほか、地震保険の補償内容・お客様のご契約内容に関するご相談・お問い合わせなども含まれる。
建物・家財の合計値である。

(注2)「調査完了件数」には、調査が完了して実際に保険金をお支払いした件数のほか、保険金のお支払いの対象とならなかった事案やご相談・お問い合わせなどを受け付けた段階で解決した事案などの件数が含まれる。

 

[2016-09-14]
 アクサ生命が“重症化予防”新コンセプトの商品、日本初 予防・早期治療で支払い

 アクサ生命は、疾病の重症化予防をサポートする「予防・早期治療サポート」(正式名称:重症化予防支援保険〈無解約返戻金型〉)を9月20日に発売する。8疾病を対象に、初期段階で見舞金・一時金を支払い早期治療をサポートするもので、病気の重症化を予防する新しいコンセプトの商品。6日に行われたFP・メディア向けの商品戦略説明会で、執行役員メディカル&プロテクション事業本部長の松下健一郎氏が同商品の特長などを紹介した。同氏によると対象疾患(注)で入院の有無を問わず、所定の通院で保険金を支払う商品は日本で初めてだという。
 「予防・早期治療サポート」は、@悪性新生物・上皮内新生物A脳血管疾患B急性心筋梗塞C糖尿病D慢性腎不全E肝硬変F骨粗しょう症G関節リウマチ―の8疾病を対象に、発症初期の段階で見舞金・一時金を支払うというもの。早期の通院や投薬をサポートすることで病気の重症化を予防するというコンセプトの下、開発した商品。重症化予防見舞金は2万円から20万円で、対象の疾病で継続30日以上入院した場合も一時金を支払う。
 商品開発に当たり実施した調査では、重症化を心配する年齢層は45歳以上が多数を占めていることが判明したという。この調査結果を受け、商工会議所を顧客に持つCCIチャネルでは中小企業の経営者などを中心に、現在契約中の商品に追加販売していく。一方、FAや代理店チャネルでは比較的若い層の顧客が多く、こうした若年層への販売にも力を入れる方針だ。
 松下氏は、糖尿病や骨粗しょう症を例に、合併症を発症すると重症化リスクが高まると述べ、二次予防に重点を置いた商品であることをアピール。早期発見・早期治療で重症化を予防するというコンセプトの同商品は、「働き盛りの、家族を持つ人にこそ、商品本来の力を発揮できる」と強調し、見逃しがちな早期治療で将来への備えを訴求していきたい考えを示した。
 説明会ではこの他、執行役員テクニカル&プライシング本部長の野島崇氏が「患者申出療養制度」の概要を説明した。「患者申出療養制度」は、患者からの希望によって日本で承認されていない医薬品などを公的医療保険が適用された治療と併用できるようにするもので、2016年4月に施行されている。
 同社では、従来型の保険商品と、健康サポートアプリ「HealthU」や治療後のリハビリサポートなどで顧客を支援するサービスを展開してきた。こうした「医療保障を再定義」するという取り組みを継続し、病気の重症化を防ぐことで顧客をサポートしていく。
 (注)糖尿病・骨粗しょう症・関節リウマチ・脳血管疾患・急性心筋梗塞・慢性腎不全


 
[2016-09-13]
 あいおいニッセイ同和損保が迅速な修理・支払い実現、損害調査にスマホ動画

 あいおいニッセイ同和損保はこのほど、事故車両の損害調査にスマートフォンを活用した「視界共有システム」を導入した。動画を用いたリアルタイムな調査を実現することで、損害調査を迅速化する。同社によると、こうした取り組みは業界初だという。
 同システムでは、スマートフォンで撮影した高品質な動画映像により、静止画像では確認が困難だった細かい線傷やパネルのゆがみなども確認できる他、遠隔地の修理工場と技術アジャスターとの間でリアルタイムで修理内容の打ち合わせ・決定を行うことができる。結果として、修理工場は顧客へ修理内容・金額を早期に案内でき、迅速な修理着工・納車や保険金支払いが実現できる。
 同社では提携修理工場との間で2014年から既に同システムを試験的に導入しており、今後順次、システムの運用を全国へ拡大していくとともに、「遠隔地の損害調査」「自然災害対応」「24時間365日事故対応」への応用など幅広く活用方法を検討していくとしている。なお、同システムは三井住友海上でも今年2月から試験的に導入しており、MS&ADインシュアランスグループとしても同システムの展開を図る考え。
 従来、事故車両の損害調査では、技術アジャスター(物損事故調査員)が修理工場などに出向いて損害を直接確認する方法や、工場から伝送された静止画像で確認する方法、または印刷された写真で損傷を確認する方法を用いていた。これらによる損傷確認を基に、技術アジャスターと修理工場との間で修理内容を協議していたが、どの方法でも損害確認・修理開始までに一定の時間を要することが課題となっていた。


 
[2016-09-12]
 第一生命・総合営業職、官公庁・企業開拓を強化、採用数増やし育成にも注力

 第一生命では、主に都市部の官公庁や民間企業の職域に特化した「総合営業職」を強化している。大学新卒者を採用する同職種は1987年に「ファヌーブ」として本格スタートし徐々に陣容を拡大。今年5月には1990人までになった。昨年4月に474人、今年4月に524人と昨年度から採用を増強しており、2020年には2500人体制にする計画だ。07年には「職掌転換制度」を開始し、今年4月には過去最大規模の51人が本社・各拠点での基幹職(事務系職種)として異動。現場での経験を生かした活躍で社内を活性化させている。
 同社では、15年度から新部署として総合営業職推進部も立ち上げて総合営業職の強化を打ち出した。職域開拓のノウハウ構築と指導者層の育成、第一生命グループ各社への人財輩出を目的に陣容を拡大しており、今年5月には全国の拠点数も70までになっている。
 主に住宅地で活動する営業職員に対して、官公庁や大企業での就労者の開拓を担っている同職では、営業方法や教育制度にも特色がある。安定収入により家族を支える層をターゲットとしていることから、福利厚生制度(退職金制度など)や社会保障制度に関する詳しい知識を備えた上でコンサルティングを行う。当初からハイレベルな研修を設定していることもあり、入社条件を大学新卒としている。
 教育では、1〜5年目までを育成期間として基本を徹底。「商品」「社会保障・税務」「病気・医療」「企業の福利厚生」「金融リテラシー」を5大知識と位置付け、座学の他にチームによる参加型研修にも力を入れる。また、執務室での営業活動が可能な企業、食堂のみに制限されている場合、家族構成の違いなどに合わせた実践型の研修も行う。さらに、指導者層に対する研修も充実させており、社外専門家によるコーチングをベースに、マネジメント力強化を図っている。今年度からは、札幌、名古屋、大阪、広島、福岡など大規模拠点の指導者層が首都圏で2週間トレーニーとして活動する新たな仕組みにも着手した。
 採用は、主要拠点(札幌、仙台、新潟、静岡、首都圏、名古屋、大阪、広島、福岡)ごとに実施しており、地域の雇用創出にも貢献している。さらに、地方から上京し地元での就職を希望しているUターンを見据えた形の就職をすることもできる。
 総合営業職推進部では、20年の2500人体制実現に向けて、今年4月に新潟と静岡にオフィスを新設し、来年4月の浜松の設置も決めた。今後も大規模事業所(官公庁や企業)の有無や新卒大学生採用の可能性などを考慮して新規オフィスを増やし、組織を拡大していくという。一方、職掌転換制度をはじめとしたキャリアの多様化についても、結婚や出産などに合わせた柔軟な働き方の実現に向けて拡充していく方針だ。


 
[2016-09-09]
 大同生命が治療費軽減の保険開発へ、ロボットスーツ用い特定疾病に対応

 大同生命はこのほど、CYBERDYNE梶iサイバーダイン)との間で業務提携契約を締結したことを明らかにした。提携に基づき同社では今後、当局からの認可を前提に、サイバーダインが開発・提供するロボットスーツ「HAL(R)医療用下肢タイプ」を用いた特定の疾病治療に対して、受療者の治療費用の負担を軽減するための新たな保険商品の開発を目指す計画だ。
 サイバーダインは、2004年に筑波大学発ベンチャーとして設立。以来、社会が直面するさまざまな課題を「サイバニクス(注)」を駆使した革新的技術によって解決することを目指し、研究開発から社会実装までを一貫して推進している。同社では「科学技術は人や社会の役に立ってこそ意義がある」との理念の下、医療・福祉・生活分野(オフィスや工場などの職場を含む)に焦点を当てた「人支援産業の創出」に取り組んでいる。
 サイバニクスを用いた「ロボットスーツHAL」(Hybrid Assistive Limb)は、身体機能を改善・補助・拡張・再生する世界初(同社調べ)のサイボーグ型ロボット。医療用HALは、昨年11月に神経・筋難病疾患患者を対象に新医療機器として製造販売承認を取得。今年4月には医療用HALを利用した神経・筋難病疾患患者のロボット治療に対して世界で初めて公的医療保険の償還価格が決定した。また、9月2日からは公的医療保険による医療用HALの保険治療が開始されている。
 大同生命による業務提携は、同社の医療保障保険の魅力向上とともに、「医療用HAL」による先進的な難病治療の普及・浸透の促進を通じて難病患者の支援の一助となる事を目的としたもの。
 一方、サイバーダインは、独自の「サイバニクス」技術を駆使した各種製品・サービスの提供を通じて「重介護ゼロ社会」の実現を目指しており、保険商品や健康関連サービスを提供する大同生命とは、多くの事業領域で共通する経営理念を持っている。
 両社では今後、幅広い事業分野でサイバニクスと保険の協働によるシナジーを発揮することを通じて、人々の健康で豊かな社会づくりに貢献していく考え。
 (注)サイバネティクス、メカトロニクス、インフォマティクスを中心に、脳・神経科学、IT(情報技術)、ロボット工学、心理学、法学、倫理、経営などを融合・複合した新たな学術領域のこと。筑波大学山海嘉之教授(サイバーダイン社長)が創成した。


 
[2016-09-08]
 日本生命、国内初 特定不妊治療を保障、2年間の不担保期間を設定

 日本生命は10月2日から、新商品「ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険“ChouChou!”」を発売する。16歳〜40歳までの女性を対象に、三大疾病や死亡の保障に加えて、出産時の給付や特定不妊治療の保障、満期時の一時金を組み込んだ商品。発売は4月1日に保険業法が改正され、不妊治療に係る保険の引き受けが解禁されたことを受けたもので、同社によると、出産時の給付と特定不妊治療の保障で出産をサポートする商品の提供は国内初だという。特定不妊治療には公的な助成制度があるものの、治療費は公的医療保険制度の対象外で全額自己負担となることから経済的な負担が大きかった。少子化を背景に、妊娠・出産の支援へ民間保険会社の果たす役割にも期待が高まっており、同社ではこうした社会情勢を踏まえて発売を決めたとしている。
 商品名の「ChouChou(シュシュ)」とは、フランス語で「私のお気に入り」という意味。同保険では、契約者が出産した場合に出産給付金を、所定の特定不妊治療(体外受精と顕微授精)を受けた場合に特定不妊治療給付金を支払う。
 出産給付金の額は1人目が10万円で出産回数に応じて増額し、5人目以降は100万円を支払う。特定不妊治療給付金は最大12回を限度に、1回の治療につき1回目〜6回目については5万円を、7回目〜12回目については10万円を支払う。三大疾病の保障では、所定のがん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中と診断された場合に一時金として300万円を支払う。上皮内がんと診断された場合には一時金で30万円を支払う。保険期間満了時には最大200万円の満期一時金を支払う他、万が一死亡した場合には死亡保険金300万円を支払う。
 保険期間は10年、15年、20年から選択する。保険料は契約年齢と保険期間によって異なるが、おおむね月額1万円前後となっている。がんについては責任開始日から90日間、出産については1年間、特定不妊治療については2年間の不担保期間がある。
 付帯サービスとしては、女性特有の症状・疾患などの体の悩みについて無料で専門家に相談できる「Wellness―dial f」、適切な治療やセカンドオピニオン取得のための専門医の紹介を無料で受けられる「べストドクターズ・サービス」、子どもの健康や育児について専門家に無料で相談できる「育児相談ほっとライン」を利用できる。特に「Wellness―dial f」では、新商品の発売に合わせて、今回新たに「妊娠・出産に関する悩み」を受け付け対象に追加した。
 不妊治療保険について金融庁はかねて金融審議会などで検討を進めていたが、「保険の対象になり得る要素があり、社会的意義も認められる」とする一方で、モラルリスクや逆選択の問題、リスク管理の難しさなどを理由に、「保険会社は適切な商品設計やリスク管理が行えるよう実務的にさらなる検討を経た上で、実際の商品開発を進めるべき」とし、商品の認可には慎重な姿勢を保っていた。しかしその後、晩婚化や少子化がさらに進展し、政府が2015年に「少子化社会対策大綱」を策定したことなどを受けて、金融庁は今年、保険業法を改正。保険会社が不妊治療に係る保険の引き受けを行うための規則を追加し4月1日に施行することで、民間保険会社による「不妊治療保険」の提供に向けた環境を整えた。


 
[2016-09-07]
 SOMPOリスケアがアナリティクス部を新設、ビッグデータ分析 新サービスに

 SOMPOリスケアマネジメントは、8月1日にアナリティクス部を新設した。現代では、これまでにないほどのスピードで大量かつ多種多様な情報が集まる。これらを分析することで顧客のニーズに沿ったサービスの提供や詳細な市場分析、将来予測などが可能になることから、専門性の高いデータサイエンティストの存在が不可欠となってきている。同部には現在、自然災害リスク評価のアナリストの他、4人のデータサイエンティストが配置されている。  新設されたアナリティクス部の役割は、@リスク定量化技術を資本効率向上・商品開発に生かし、損保ジャパン日本興亜グループの収益拡大に貢献A海外損保事業の拡大とリスク管理強化ニーズに応えるため、定量化技術の高度化および評価体制を強化Bビッグデータアナリティクス技術を駆使し、グループのデータサイエンス事業の推進・強化に貢献―の三つ。
 同部の主な業務は、自然災害リスク評価モデルの開発(地震・津波・台風・洪水リスクモデル、風力発電施設評価モデルなど)、自然災害リスク評価体制の整備(自然災害リスクのプライシング、グループ共通の自然災害リスク評価体制・評価手法の構築)、国内外の保険リスク評価(再保険スキームの最適化や個別保険契約の引受前収益性分析・ポートフォリオの最適化)、保険商品の開発支援(国内地震料率テーブル作成、天候・地震デリバティブ商品開発)、ビッグデータアナリティクス(自動車・ヘルスケア・マーケティング分野におけるモデル開発)だ。
 データサイエンティストとは、ビッグデータを活用し、企業内外を取り巻く大量のデータを分析、それをマーケティングなどに生かす専門家。プログラミングなどのITスキルのみならず、ビジネスノウハウや統計学など幅広い分野の知識が必要とされる。
 同社のデータサイエンティストは、蓄積したビッグデータと保険実務で利用している統計分析技術を駆使して、潜在的な顧客ニーズ推定や疾病発症予測、異常検知などさまざまな分野で顧客に新しいソリューションを提供する。
 アナリティクス部データサイエンスグループの久保田真樹主任研究員は「ウエアラブルデバイスなどさまざまな機器からデータが取得できる環境が整いつつあることで、データ分析は保険とより一層結びついていく。現在では保険業界でデータ分析に対するニーズが高まっており、データサイエンティストの活躍フィールドが広がった」と話す。
 同社はこれまで、アナリティクス部の前身である定量評価部で生活習慣病の発症予測モデルの開発や、今年の5月に日本産業衛生学会で発表したストレスチェックデータと休職やストレス関連疾患での受診との相関関係の分析などを行っていた。
 また、今年2月から提供を開始した企業の健康経営を支援する「健康経営推進支援サービス」でも、健康診断やレセプト、労働生産性などのデータを分析することで企業の健康課題の把握や施策の立案、保健指導などのソリューションまで一貫したサービスを行っている。
 同部同グループの本和明グループリーダーは「現在、データサイエンティストの採用と育成が大きな課題となっている。常に最新の技術動向を捉えるとともに、ニーズにマッチしたデータ分析サービスを提供できるよう心掛けていきたい」と話している。


 
[2016-09-06]
 AIGの新事業戦略「ACTIVE CARE」、「先進的なリスク予防」提供

 AIGジャパン・ホールディングスはこのほど、日本におけるAIGグループ統一の事業戦略コンセプトとして「ACTIVE CARE」を新たに展開することを決定した。AIGの持つ世界中で蓄積した知見やリスクの認識・軽減につながる最新のテクノロジーを活用して、日常に潜むリスクを的確に把握し、そのリスクに備えるための支援の提供を図る。事後の経済的補償だけでなく、事故そのものが起こらないようリスクを最小化するための予防的サービスを目に見える分かりやすい形で積極的に提供し、保険をより身近なものへと変えていくことを目指す。
 AIGジャパン・ホールディングスは「ACTIVE CARE」について、@顧客の目線に立ったシンプルで分かりやすい透明性のある関係A万一のときだけでなく、事故や損害を未然に防ぐ支援B世界中で蓄積された最先端の知見、テクノロジー、日本についての洞察力―の三つの要素で構成される事業戦略コンセプトと説明。まさかの時の補償はもちろん、そのまさかが起こらないようにするための「先進的なリスク予防サポート」も提供することで、「保険の分かりやすさ」の追求と併せて、AIGグループが顧客のパートナーとして選ばれることを目指していくとした。
 これまで同社が顧客や保険代理店を対象に実施したさまざまな調査から見えてきたのは、日本の顧客が保険に対して大きな不満を感じているという事実だったという。そこで同社では、万一に備えた補償だけでなく、日々の生活の中での“まさか”を未然に防ぐためのサポートを提供し顧客にとっての保険の価値を拡大していくことが、これからの選ばれる保険会社になるために必要との考えから、新たな事業戦略の展開を決めた。
 また、AIGグループでは、AIGジャパン・ホールディングスの大阪本社開設を機に、「ACTIVE CARE」に基づく活動の一例として、成人の自転車運転時のヘルメット着用の推進をテーマにしたイベントを8月26日に開催。同イベントは、大阪府が今年7月から自転車保険の加入を義務化する条例を施行したこと、また大阪府とAIGジャパン・ホールディングスとの間で、同日に地域のリスクマネジメントの強化に共同で取り組むことなどを含む協定を結んだことも背景となっている。
 AIGジャパン・ホールディングス社長兼CEOのロバート・ノディン氏は新事業戦略の発表と大阪本社を開設したことなどを受けて、「大阪は躍動感にあふれた都市であり、われわれの大阪本社も将来に向けての期待感に満ちている。イノベーションを積極的に後押しし、新たな考え方を歓迎する大阪の地から、AIGが『ACTIVE CARE』というコンセプトを地域型イベントの開催を通して紹介できることを非常にうれしく思う」とコメントした。


[2016-09-05]
 生保協会が窓販手数料開示で留意事項を公表、上乗せやボーナス支払も含む

 保険窓販手数料の開示の問題について、生保協会は9月1日、「市場リスクを有する生命保険の販売手数料を開示するにあたって特に留意すべき事項」(以下、「留意すべき事項」)をまとめ、公表した。会員各社が自主的に販売手数料を開示する場合に特に留意するべき事項について、参考となる考え方を整理した。生保協会では金融庁の「フィデューシャリー・デューティー」の趣旨を踏まえてさまざまな取り組みを行ってきたが、このほど大手銀行がそろって10月から顧客に手数料を開示する意向を示したことなどを受けて、協会として開示の指針を示すことで会員各社による透明性向上に向けた取り組みをさらに後押しする。
 「留意すべき事項」は個人保険・個人年金保険分野での市場リスクのある生命保険の募集を念頭に置いたもので、会員各社が販売手数料などを開示する場合に、実務の参考に供する目的で策定された。拘束力はなく、同協会では会員各社が顧客本位の視点に立って自主的な取り組みを行っていくことが重要との考えを示している。同協会は、生命保険会社が「特に留意すべき事項」として三つの点を挙げた。
 一つ目は「販売手数料」の定義に関するもので、「販売手数料等とは、販売手数料の名目で支払われるものに限らず、市場リスクを有する生命保険の募集に対して、生命保険会社から銀行等及び第一種金融商品取引業者(本紙注)に支払われる金銭を言う」(金銭には一定の条件を満たした場合に支払われるもの、例えば、販売手数料などの上乗せ支払いやボーナス支払いなどを含む)とするとともに、生保会社が銀行などに金銭以外のものを提供する場合(社会通念上、過度と見なされない場合を除く)についても、販売手数料開示の趣旨の潜脱とならないよう留意する必要があるとした。
 二つ目は顧客に対する情報の開示媒体と方法に関するもので、「生命保険会社は、銀行等及び第一種金融商品取引業者が市場リスクを有する生命保険契約の募集を行う過程において、顧客が販売手数料等を認識できる媒体を銀行等及び第一種金融商品取引業者に提供する」こととし、特定の媒体に限定せず@商品パンフレットやビラなどの書面A端末による電磁的方法―などで提供することも考えられるとした。いかなる方法でも、顧客に対して分かりやすく開示を行うための措置を講じることを求めた。
 三つ目では、主な開示事項として、@販売手数料等の料率または算出方法A当該販売手数料等が、保険業法第300条の2により準用される金融商品取引法第37条の3第1項第4号の「手数料、報酬その他の当該特定保険契約等に関して顧客が支払うべき対価」に追加して顧客が負担すべきものではないこと―の二つを挙げた。
 販売手数料の体系が複雑であるなど、分かりやすく開示することが困難な場合には、生保会社が銀行などに提供する媒体上は、支払い上限の開示や一定程度幅のある開示とすることも考えられるが、その場合であっても可能な限り具体化に努めるとともに、具体的な販売手数料などの料率または算出方法に関して顧客から照会があった場合には、銀行などが回答するための措置を講じる必要があるとした。
 「留意すべき事項」では、顧客向け開示資料の事例として、末尾に保険料払い込み方法と販売手数料の支払い方法ごとに五つのケースの記載例を掲載。開示資料の記載内容については、生保会社から銀行などに対して支払われる販売手数料を顧客が認識できるよう、会員各社の判断で適正な記載に努めることが望ましいとした。
 (注)主に証券会社や金融商品先物業者を指す。有価証券の売買・勧誘、引き受け、店頭デリバティブ取引、資産管理業務などを行う事業者のこと。


 
[2016-09-02]
 ネオファースト生命、三大疾病による収入減少カバー「健康体」なら保険料割引

 ネオファースト生命は9月23日から、保険ショップなどで「ネオdeしゅうほ」(正式名称:無解約返戻金型収入保障保険)の販売を開始する。同保険は、健康診断結果や喫煙状況により、契約者の保険料に「非喫煙者健康体」「喫煙者健康体」「標準体」のいずれかの保険料率を適用。「健康体」の基準を満たす契約者には保険料を割り引く他、「非喫煙者健康体」にはさらなる割引を適用する。三大疾病にも備えることができる他、年金の支払い方法は複数から選択できる。保険期間は経済的保障を必要とする時期に応じて選ぶことができるため、必要な期間に必要な保障額を合理的に備えることができる商品となっている。
 「ネオdeしゅうほ」では、被保険者の体格(BMI)、血圧値、血液中のGOT値(注)が所定の基準を満たした場合、「健康体保険料率」を適用して保険料を割り引く。加えて、同被保険者が1年間たばこを吸っていない場合には「非喫煙者健康体保険料率」を適用し、保険料にさらなる割引を適用する。第一生命が持つ約1000万人のビッグデータを活用したもので、ネオファースト生命によるとGOT数値を保険料率の計算に取り入れる取り組みは生保業界では初めてだという。
 特定疾病保険料払込免除特約を付加した場合、三大疾病(所定のがん・急性心筋梗塞・脳卒中)により所定の事由に該当した場合に以後の保険料の払い込みが不要となる。特定疾病収入保障特則は、同じく三大疾病により所定の事由に該当した場合に保険期間満了まで特定疾病収入保障年金を受け取ることができる特則で、前特約と同様に以後の保険料の払い込みが不要となる。
 年金の支払い方法は、毎月受け取る方法に加えて、全額を一時金で受け取る方法や、一部を一時金で受け取り、残りを毎月受け取る方法を選択できる。一部を一時金で受け取る方法は複数回の受け取りが可能で、一時的な資金ニーズなどに柔軟に対応できる。
 医療技術の進歩などにより、三大疾病に罹患(りかん)した場合の経済的負担の状況は変化してきており、例えば、がんの場合、罹患後の5年生存率は改善傾向にある一方、罹患後に個人の収入が減少した人は45%、世帯の収入が減った人は56%(東京都調べ)とがん罹患後に収入が減少するリスクは高く、がん患者の就労支援問題が浮き彫りになってきている。厚生労働省も今年2月に「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を公表し、同ガイドラインの普及や企業に対する各種支援を通じて、疾病を抱える人が治療と職業生活を両立できる環境の整備に取り組んでいる。
 「ネオdeしゅうほ」はこうした課題を踏まえて、特定疾病収入保障年金の提供などを通じて、三大疾病による収入の減少や治療費の負担に対して長期にわたる備えを提供する商品となっている。
 (注)肝臓に多く含まれる酵素で、一般的にGOT値の増加は肝臓の働きが弱まっていることを示すとされている。


 
[2016-09-01]
 地震保険誕生から50年 制度の課題と今後を考える

 地震保険制度が誕生してから50年が経過した。同制度はこれまで巨大地震が発生するたびに拡充され、東日本大震災でも有効に機能した。しかし、4月には熊本地震が発生した他、今後も首都直下地震や南海トラフ地震などの巨大地震の発生が予想されている。こうした巨大地震に際しても安心のよりどころとして迅速・確実に保険金が支払われることが重要であり、そのためには地震保険制度の強靭(きょうじん)性や商品性の向上が求められている。
【新潟地震がきっかけに】
 地震保険制度が創設されたのは1966年。その2年前の64年に発生した新潟地震が創設に至る直接的な震災と言われている。同地震では、死者は26人と奇跡的に少なかったが、被害は新潟・山形・秋田など日本海側を中心に9県に及んだ。これを受け、当時大蔵大臣だった田中角栄氏が地震保険の必要性を提唱し、66年に「地震保険に関する法律」が制定された。
 危険準備金の積み立てがゼロの状態からスタートした地震保険制度は、1回の地震による損害の過大な集積を避ける必要があったため、当時は加入できる保険金額の限度が建物90万円、家財60万円と低い水準だった。また、補償は全損のみだった。そのため、78年6月の宮城県沖地震では、保険契約者や各方面から強い改善要望があり、80年7月の改定で半損が導入された。
 また、87年12月の千葉県東方沖地震は千葉県全域にわたって被害をもたらしたことから、補償内容を充実させて地震保険の普及を促すため、91年4月の改定で一部損が導入された。これによって現在の全損・半損・一部損の3区分の損害区分が確立された。
 地震保険制度の大きな転換点となったのは95年1月の阪神・淡路大震災だ。震災発生直前の地震保険の世帯加入率が制度創設以来最低水準であった他、兵庫県の世帯加入率が全国平均を大きく下回っていたため、最終的な保険金支払い額は783億円にとどまった。これらを背景に、さらなる普及促進を図るため、96年1月の改定で加入限度額の引き上げや保険料率の見直しが行なわれた。
【東日本大震災受け地震保険制度PT設置】
 制度創設後、最も巨額な保険金支払い額となったのは2011年3月に発生した東日本大震災。わが国観測史上最大となるマグニチュード9.0という巨大地震と10メートルを超える津波が発生し、東北・関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらした。
 保険業界では、地震保険契約会社照会制度の創設や航空写真などによる全損一括認定の実施、継続契約の手続きや保険料払込みの猶予措置といった新たなスキームを構築して迅速に対応した。その結果、78万件、1兆2000億円を超える保険金を迅速に支払うことができ、被災者の生活再建に大きく寄与した。一方、巨額の保険金支払いにより、民間保険会社の危険準備金が大幅に減少して負担力が低下するとともに、今後、発生が懸念されている首都直下地震や南海トラフ地震などに対応するためには、地震保険制度の強靭性の向上が求められた。また、震災後、被災した契約者などからは地震保険の商品性などに対するさまざまな意見が寄せられた。
 こうした状況の中、12年1月24日に閣議決定された「特別会計改革の基本方針」において、地震保険制度について「今回の震災を踏まえ、総支払限度額及び官民保険責任額について早急に改定を行うとともに、地震保険の商品性についても検討を行なうものとする」とされ、同年4月、財務省に「地震保険制度に関するプロジェクトチーム(地震保険制度PT)」が設置された。有識者らが集まり、地震保険制度の根本に関わる全体像や制度の強靭性・商品性について議論した。また、13年11月から、地震保険制度PTの報告書で整理された課題への取り組み状況などについてフォローアップするため、地震保険制度PTフォローアップ会合が開催された。
【新たな地震保険制度がスタート】
 17年1月から適用される新たな地震保険制度は、これまでの損害区分である全損・半損・一部損の3区分のうち、半損が大半損(60%)と小半損(30%)に分割され、損害区分が4区分となる。これにより、損害査定の迅速性を確保しつつ、より損害の実態に照らした損害区分になることが期待される。
 地震保険基準料率も17年1月から変更となり、全国平均で5.1%引き上げられる。改定率は都道府県、構造区分別に異なるが、最大引き上げ率は14.7%、最大引き下げ率は15.3%。損害保険料率算出機構が算出した結果では、料率は全国平均で19.0%の引き上げが必要なことが判明したことから、都道府県ごとに3段階に分けて料率改定を行う方針だ。
 都道府県別料率は、震源への近接性といったリスクに応じて四つの等地(同一保険料率のグループ)に区分して料率格差を設けていたが、料率格差の平準化を図る観点から14年7月に4区分から3区分に統合された。今回、新たに危険度計算を行ない、等地を再区分した。具体的には、現行で2等地だった北海道、青森、新潟、岐阜、京都、兵庫、奈良が1等地に、現行で3等地だった愛知、三重、大阪、和歌山、愛媛が2等地に移行する。
 新たな地震保険制度が適用されると保険料が上がる地域があるが、それはその地域の地震リスクが高いことを示している。地震保険の付帯率は上昇傾向にあり、消費者の地震リスクに関する認識・関心は少しずつ高まっているが、地域による付帯率のバラつきや、消費者の地震保険に関する理解が不十分といった課題もある。
 保険業界においては、消費者の地震リスクに関する認識の向上と、地震保険のさらなる普及に向けた継続的な取り組みが重要となる。


 

 (保険毎日新聞から抜粋)